「BIPROGY FORUM 2023」出展レポート! 「Dot to Dot」と「L-PASS」の最新動向を紹介

「BIPROGY FORUM 2023」出展レポート! 「Dot to Dot」と「L-PASS」の最新動向を紹介

UPDATE:2023.7.19

データ利活用 地域共創 産学官連携 Dot to Dot L-PASS

「BIPROGY FORUM 2023」とは、BIPROGYグループによる社会課題解決型ソリューションが一堂に会するイベント。昨年の2022年に引き続いて2023年6月、2日間にわたって開催されました。来場者数は総計約2200人。多くの方に足を運んでいただきました。

約2200人の来場者で「BIPROGY FORUM 2023」が賑わいました

2023年4月に旗揚げされたばかりのConnectXからは「BIPROGY FORUM 2023」に「Dot to Dot」「L-PASS」「キイノクス」の3件を出展。「つながれば、社会は変えられる。」というスローガンで表現したConnectXの世界観をみなさまに感じていただきました。

中でも“つながる”というテーマを色濃く体現しているのが「Dot to Dot」と「L-PASS」です。これら2つのソリューションはConnectXの旗揚げに先立って、数年前から始動しています。「BIPROGY FORUM 2023」は、これまで行ってきた企画検討を一緒に行った関係者との討議や実証実験などの活動で得た知見をお伝えすることで確かな手ごたえを得る機会となりました。

今回は「Dot to Dot」と「L-PASS」の最新動向を「BIPROGY FORUM 2023」でご報告した内容にもとづいてレポートします。

出展されたブースの数はイベント全体で42件でした。
ConnectXからの出展ブースのうち「Dot to Dot」と「L-PASS」をご紹介します

Dot to Dot:パーソナルデータの活用で生活者をより豊かに

独自の顧客体験を感じられるように、ブースではモックアップのアプリに触れていただきました

近年では、顧客体験の最大化を目的とする顧客接点の見直しの動きが広がっています。方策のひとつとして挙げられるのが、既存のサービスの付加価値向上とあわせて、関連事業を“数珠つなぎ”で生活者が使えるようにする取り組みです。そのため、様々な事業者間連携が起きており、オープンイノベーションによる“共創”が促進されています。

ただ、懸念されているのが、データ連携をともなう事業者間連携に際して生活者がさらされるストレスです。ひとたびデータを提供すると、それ以降、企業の都合で自分のデータが管理されることになり、一方的にサービスや商品の勧誘・通知を生活者が受ける可能性がありました。これは、個人の意思をないがしろにされている感覚につながるため、ストレスになりかねないというわけです。

このような課題を乗り越えるため開発されたのが「Dot to Dot」です。データの流通による生活者のより豊かな生活と、価値の創造による企業成長の両立を目指しています。

「Dot to Dot」が実現する顧客体験には2つの特徴があります。1つは「データの個人主権(※)」を尊重している点です。“個人の意思”に基づいて、各サービスから求められるデータ連携に生活者が同意可否を決められることに加えて、提供するデータ項目もそれぞれ選択できます。ひとたびデータ連携に同意した後にも、同意を取り消したり、データ提供に制限かけたりすることが可能です。さらに、自分のデータが連携された履歴について、生活者が時間や相手などを確認できます。これらの機能が実装されていることから、「Dot to Dot」ではデータ連携による事業者間連携サービスを生活者が安心して利用できるというわけです。

※データの個人主権とは「個人のもとにパーソナルデータが属しており、その利用可否などの権利も本人が有している」という考え方です。 Dot to Dotはこの考え方をベースにしており、事業者側の一方的なデータの囲い込みではなく、生活者が主体となってデータ提供先や連携同意の可否を選ぶことができる仕組みを実現しています。

「Dot to Dot」による「個人データ主権」のイメージ図

もう1つの特徴が「分散型データ連携」です。「Dot to Dot」は1カ所でデータを保持しておらず、各サービス提供元が登録された個人のデータをそれぞれ維持・管理しており、生活者の同意に基づいて事業者間連携を進めていきます。中央集権的にデータが集められておらず安全性が担保されているというわけです。

「Dot to Dot」による「分散型データ連携」のイメージ図

事例紹介:アレルギー情報のデータ連携による「災害に強い町づくり」(福島県猪苗代町)

2023年6月、デジタル空間を用いた官民一体の防災体制の構築に向けて「Dot to Dot」を活用した仕組みを福島県猪苗代町で披露しました。「BIPROGY FORUM 2023」のちょうど直前にあたります。

今回の取り組み案において注目されたのがアレルギーに関するパーソナルデータの連携。アプリにアレルギー情報を登録した生活者は、小売り事業者にデータ連携を同意するとアレルギー対応商品の候補を一覧できるようになります。一方、アプリに参画する小売り事業者のメリットは定期的な販売機会を得られる点にあります。

最大の特徴は、災害時対応を視野に入れた設計。平時に蓄積されたアレルギー対応商品の購入履歴にもとづいて、データ連携の同意を得た自治体が住民ニーズに沿った備蓄計画を立てられるほか、災害発生時にはアレルギー情報にもとづいた支援物資を各住民に送れる体制が可能になると期待されています。

災害対策として、住民情報のきめ細やかなアップデートは以前から議論されていました。しかし、これは非常に手間がかかる作業であることも事実。そのため、リソースに乏しい自治体にとっては解決が難しい課題でしたが「Dot to Dot」によってひとつの突破口を示すことができました。“誰一人取り残さない社会”という「デジタル田園都市国家構想」の一端を担うことも期待できるでしょう。

「Dot to Dot」を担当する社員の一人の大槻は次のように説明します。

「データ連携を実行するとき、そのメリットを生活者が確認できるようにアプリを作りました。パーソナルデータの所有者は生活者自身です。気持ちよくサービスを使ってもらうためにはきちんとした説明にもとづく同意のステップが欠かせません」

説明担当の大槻

将来的にはさまざまな家族情報の活用が視野に入れられています。例えば「歩行が不自由」といった情報にもとづいて、迅速な避難を促すためにタクシーを自動配車するといった活用方法が想定されています。

猪苗代町の事例のほか、さまざまな検証作業や実証実験を「Dot to Dot」では重ねています。公式ホームページでは、検証作業および実証作業の最新事例や、事業者による利用検討事例をご紹介しています。また、オウンドメディア「デセントラライズ」では、「生活者とサービスが共に歩む世界を作る」という「Dot to Dot」の世界観を伝えるため、その秘められた可能性について有識者が語ったコラムを掲載しています。あわせてご覧ください。

事業創出の取り組み:「DiCE」によるオープンイノベーションの推進

事業共創を推進するにあたり、データ連携や利活用は、検討が長らく続けられてきた分野です。ただ、日本では具体的な事業の立ち上げがなかなか進んでいない点に課題があります。そこで、BIPROGYが立ち上げたのがオープンイノベーション型プロジェクトの「DiCE(Digital Chain Ecosystem)」です。

「DiCE」とは、データを保有する各社が参画企業をそれぞれ募り、共創による事業創出を目指すというプロジェクトです。あいおいニッセイ同和損保・朝日生命・日本航空の3社がデータの保有企業として参加しており、それぞれ設定された戦略テーマのもとに参画企業が集いました。今年8月末には「DiCE」で議論された新規事業が続々と発表される予定です。

「DiCE」のイメージ図

「システムインテグレーター」として認知されているBIPROGYですが、事業領域をシステム構築の仕事に限らず、事業創出の役割をともに担おうと模索してきました。『DiCE』では『Dot to Dot』というアセットの提供により事業創出に直接関わろうとしています」と、大槻は説明します。

ここから有望な事業が一つでも立ち上がれば事業者や生活者がパーソナルデータの活用によるメリットを具体的にイメージできるようになるはず……「DiCE」にはそんな期待が込められています。事業者をまたいだデータ連携により新ビジネスが検討されていること自体が意欲的な取り組みですが、扱われるデータにはパーソナルデータも検討領域に含まれていることが画期的です。新しい事業共創の手法には、日本におけるデータの利活用を阻む障壁に“風穴”を空ける可能性が期待されています。

パーソナルデータの活用に対する関心の高さを再確認

「BIPROGY FORUM 2023」では、パーソナルデータの活用を模索している企業のみなさまからの声に耳を傾ける機会にも恵まれました。「Dot to Dot」を担当する箱﨑によれば、潜在的とされていたニーズが、顕在化しつつある現状を改めて実感する機会になったとのことです。

「流通業界や交通業界では膨大なパーソナルデータを保有する企業が少なくありません。しかし、生活者のニーズに深い次元で応えるには自社だけでは困難と考えられているようです」

ネックして語られた要素のひとつが、新しいマーケティング手法の導入による手間と費用の増大でした。パーソナルデータを始めとするデジタル要素をふんだんに活用すれば、有効な施策を導き出せる可能性がある一方で、分析対象となるデータは“底”が見えないほど膨大というわけです。

「最近ではマーケティングファネルを用いた手法がデジタル技術と掛け合わせることでその進化スピードがますます上がっています。マーケティングファネルの各ステップでは、想定されている顧客像の解像度を高精細に保つことが重要です。この点においてデジタルの進化が大きく貢献してきました。しかし、これらの手法により顧客像の解像度を高めるには多大な費用がかかるため、二の足を踏む方が少なくありません。このような課題を感じている方々に『Dot to Dot』の可能性についてご説明しています」(箱﨑)

リーダーの箱﨑

「顧客像の解像度を高めるには、膨大なデータについて組み合わせや分析が求められますが、これはなかなか大変な作業です。しかし『Dot to Dot』ではデータ連携を同意した生活者を“確度の高い見込み客”として捉えることもできます。なぜなら、生活者が企業間共創によるサービスを使うためデータ連携を認める「意思」がわかるからです。もしかしたら、分析の手数を大幅に省略できるかもしれません。『Dot to Dot』による“共創”では従来では明らかにされなかったような生活者の本音が明らかになるかもしれません。革新的なマーケティング手法が生まれる可能性があります」(箱﨑)

L-PASS:地域活性化DXが地域の力をひとつにまとめる

「BIPROGY FORUM 2023」では「Dot to Dot」のほかにもう一つ、地域事業者同士の共創を促すデジタルソリューションが紹介されました。それが地域活性化DXサービスの「L-PASS」です。地域通貨・地域ポイント・デジタルチケットなど、エリア限定機能をアプリ経由で提供できるほか、地域情報のリアルタイム発信による消費行動の活性化が可能になります。

「L-PASS」のイメージ図

2022年、本格的に提供を開始した「L-PASS」は、元々は地域交通DXサービスとして、大津・静岡・新潟・金沢などの地域で交通事業者との二人三脚による実証実験を重ねてきました。

実証実験をふまえ、事業化の課題としてあがったのが「継続性の向上」です。交通事業者が単独で地域課題に取り組むことの難しさに直面したのです。また、継続性を確かなものとするには多様な事業者を巻き込む必要がありました。

検討の結果、多様な事業者を巻き込むことを目指して「L-PASS」のコンセプトを「地域交通DX」から「地域活性化DX」へリニューアル。「BIPROGY FORUM 2023」で新コンセプトをお披露目しました。

「L-PASS」に関する疑問にお応えしながらお客様の課題解決に役立つことをご説明しました

事例紹介:業種横断的なサービス展開による地域の魅力向上(三重交通グループ)

多様な事業者による地域活性化DXの先鞭となったのが三重交通グループアプリのリリースでした。

このアプリは、路線バス・宿泊施設レジャー施設のデジタルチケットが購入できるほか、地域で使えるクーポンを取得できるといった特徴を備えています。地域の魅力を伝える情報媒体としても活用されており、グループ各社によるキャンペーン情報や観光情報を配信しました。

三重交通グループアプリ

交通機関のほか不動産・流通・レジャー施設など、三重交通グループ内の複数事業者の共創によりグループシナジー創出に取り組んだ、このアプリ。ポイントは、「課題の共有・コンセプトの策定・ターゲティング・機能の絞り込み」といった事業構築のプロセスからBIPROGYが伴走したことにあります。

コロナ禍をきっかけとする客足の減少や、DXの必要性に悩んでいたという三重交通グループ。新たな施策による利用者拡大を模索する必要がありました。そこで、事業創造のパートナーとして声がかかったのがBIPROGYでした。「L-PASS」を担当する社員の一人の上野は次のように語ります。

「IT企業ではありますが、アプリはあくまでも課題解決の手段の一つ。事業創造のお手伝いでは、課題がはっきりしていない段階からのご相談をBIPROGYは歓迎しています」

説明担当の上野

地域通貨に注目が集まる。継続性の課題解決にはBIPROGYのナレッジを

「地域活性化DX」という新コンセプトを掲げたことにより、「L-PASS」のブースには地域密着による事業を展開している方々からのお悩みが寄せられました。とりわけ来場者の関心を引いたのがデジタルによる地域通貨の社会実装でした。

「地域通貨がメディアに取り上げられる機会が増えてきました。素朴な興味を持つ方が多いようです。『BIPROGY FORUM2023』の場ではたくさんの方々と意見交換をすることができましたが、観光客と地域住民のどちらに使ってもらう地域通貨にしたいのかといった、地域課題ごとの論点をその場でいっしょに整理していきました」(上野)

また、地域活性化の取り組みの「継続性」に関する悩みも寄せられたといいます。

「このたびのコンセプト変更の理由にもなりましたが、継続性を高めるにはやはり地域全体を巻き込めるような取り組みに育てることが大切です。そして、“稼ぐ”ということも継続性においては重要だと考えています。地域課題を解決する仕掛けと、お金を稼ぐ仕掛けをあわせ持った地域共創事業の立ち上げをBIPROGYは目指しています。」(上野)

ConnectXが推進する“共創”の意義

コロナ禍の混乱を経た現在、価値観やライフスタイルの多様化が急速に進展しました。このような社会背景のもと、多くの事業者が、事業再構築の必要性に迫られています。ニーズに応えるため新たな価値をタイムリーに創造するには既存事業の枠組みに囚われていると難しいかもしれません。“共創”には新時代のビジネス環境に適応するためのヒントが秘められています。

「BIPROGY FORUM 2023」では、“共創”が実現する新たな風景を来場者の皆様と分かち合うことができました。ここで、 新たな“つながり”のきっかけ作りができたのではないでしょうか。

ConnectXのプロジェクトやソリューションはまだまだ拡充が続けられています。今年は実証実験のみならず具体的な事業も続々とスタートする予定です。“つながり”による社会課題の解決にこれからもご期待ください。

多くの方との出会いに恵まれました。“つながり”を広げながらConnectXは進化の途上にあります

関連記事