共創とは何か?意味や目的、ビジネスで注目される理由をわかりやすく解説

共創とは何か?意味や目的、ビジネスで注目される理由をわかりやすく解説

UPDATE:2026.9.29

近年のビジネスシーンで頻繁に耳にするようになった「共創(コ・クリエーション)」。企業単独ではなく、多様なステークホルダーと協力して新しい価値を生み出すこの概念は、変化の激しい現代において欠かせない戦略となっています。 本記事では、共創の正しい意味やオープンイノベーションとの違い、求められている背景、成功のポイントに加え、PoCで終わらせず社会実装へつなげる方法と実践事例などを解説します。

目次

共創の意味と定義

共創(Co-Creation)とは、企業が消費者、他企業、自治体、大学などの多様なステークホルダーと対話・協働し、それぞれの知識や資源を持ち寄って新しい価値を共に生み出す考え方や活動を指します。

共創という概念は、経営学者のC.K.プラハラードとベンカト・ラマスワミが2004年の著書『The Future of Competition』(邦訳『価値共創の未来へ』)を通じて提唱したものです。

同書では、企業が単独で価値を企画・開発し、顧客に一方的に提供するという「企業中心の従来発想」では、もはや顧客満足や持続的成長を実現しにくくなっていると指摘されています。

この考え方に基づくと、顧客は受動的な消費者ではなく、企業や消費者コミュニティと深く関わり合いながら、価値を共に創造する「主体」として位置付けられます。これからの企業には、こうした顧客との共創を通じて、他社にはない独自の価値を生み出していく姿勢が求められているといえるでしょう。

共創の考え方は、実際に多くの企業でも取り入れられています。
例えば当社では、従来のICTサービス提供にとどまらず、テクノロジーとビジネスエコシステムを活用して社会課題の解決と新たな価値創出を目指す「社会的価値創出企業」への変革を掲げています。

また、企業や業界の垣根を越えて多様なパートナーと連携し、生活者を中心に新たな価値を創出することを共創の重要な考え方と位置付けています。

私たちは「誰もが幸せに暮らせる社会づくり」を目指し、常に生活者の視点から課題解決に取り組んでいます。この生活者を中心に据えたアプローチは、共創の考え方と深く結びついているのです。

オープンイノベーションとの違い

共創が、顧客視点や社会貢献までを見据えた、より広義の「思想・概念」であるのに対し、オープンイノベーションは、社外の技術やアイデアを有機的に組み合わせる「考え方・手法」を指します。

つまり、共創という大きな目的を達成するための、有効な手段の一つがオープンイノベーションであると捉えるのが一般的です。

いま共創が求められている理由

企業を取り巻く環境が激変する中で、共創が注目される理由は主に以下の通りです。

技術や市場環境の変化に対応するため

現代は、先行きが不透明で将来の予測が困難な「VUCA(ブーカ)」の時代です。

これは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもので、DXの進展や目まぐるしい市場変化を象徴する言葉として知られています。

IT技術の進歩やグローバル化により競争が激化する中、自社のリソースだけで完結する「自前主義(クローズド・イノベーション)」は限界を迎えつつあると言われており、外部リソースの有効活用に注目が集まっています。

多様化・高度化する顧客ニーズを満たすため

人々のライフスタイルや価値観が多様化した結果、求める商品・サービスも画一的ではなくなりました。

これまでの「大量生産・大量消費」を前提とした一企業主導の開発スタイルでは、顧客の本音や細かなニーズに追いつかなくなっています。この激しい変化に柔軟に対応するためには、社外のパートナーや時には生活者自身の視点を積極的に巻き込み、多角的なアプローチで事業を開発していく必要があります。

複雑な社会課題に対応するため

少子高齢化や地域の衰退、気候変動、介護・医療、交通など、現在の社会課題は複数の制度や産業、生活行動が絡み合って生じています。社会環境が複雑化するほど、個別の商品やサービスを追加するだけでは解消できない構造的なひずみが顕在化します。

こうした課題を解決するには、社会構造そのものの変化まで視野に入れる必要があります。しかし、一つの業種や一社だけで、必要な知見、技術、接点、データをすべてそろえ、社会全体の仕組みを変えることは困難です。企業、自治体、研究機関、NPO、生活者などが領域を越えて役割を持ち寄る共創が不可欠になります。

さらに重要なのは、課題が起きている現場に入り、サービスの提供者だけでなく、実際にその価値を受け取る生活者や地域の人々も当事者として参加することです。提供者と受益者が対話と実証を繰り返し、現場から得た学びを次の改善へ反映することで、持続的にイノベーションと価値を生み出せるようになります。

既存の優れたサービスや技術、先行事例を効果的に組み合わせ、価値を最大化する仕組みを育てることが、これからの共創に求められます。

共創の目的と得られるメリット

共創を実践することで、企業は自社単独では得られない多くのメリットを享受できます。

新規事業や新製品の開発と斬新なアイデアの創出

自社だけでは気づけなかった市場ニーズを発見し、外部の技術と掛け合わせることで、これまでにない新規ビジネスや製品を開発できます。

異なるバックグラウンドや専門知識を持つ参加者が集まることで、業界の常識にとらわれない斬新なアイデアが生まれやすくなります。

リソースの補完とシナジー効果の獲得

自社に不足している技術、人材、アイデア、販売網などのリソースを、外部との協力により補完できます。一からすべてを自社で開発・構築するよりも、コストや時間を大幅に削減できるメリットがあります。

さらに、設備や流通経路を共同利用することで、生産面や販売面でのシナジー効果も期待できます。

顧客目線での開発と新たな顧客層の獲得

消費者と直接共創することによって、実際のニーズを取り入れた製品開発が可能になります。

開発の初期段階から顧客の声を取り入れることで市場投入後の手戻りを防ぎ、顧客満足度の高いサービスを生み出せます。

企業ブランディングとコミュニティ形成の強化

社会課題の解決を目指す共創プロジェクトに参加することは、企業の社会的価値や信頼性の向上につながり、企業ブランディングを強化します。また、共創を通じて同じ目的を持つステークホルダーとの間に持続的なコミュニティが形成されます。

組織力の強化と人材育成

社外の専門家や他組織との交流を通じて、新しいアイデアの生み出し方やマーケティング手法などのノウハウを獲得できます。外部組織とのプロジェクトを経験させることは、広い視野と柔軟な考えを持つイノベーション人材の育成に直結します。

社内においても共創の文化が浸透することで、部門間の連携が強化され、組織全体の柔軟性が向上します。

共創の種類

共創は、ステークホルダーとの関係性によって主に以下の3つのタイプに分類されます。

共創の種類特徴具体例
提携タイプ
(企業 × 企業)
上下関係のない対等なパートナーとして、互いの資源を補い合う大企業とスタートアップの事業提携
共有タイプ
(企業 × 自治体 × 研究機関など)
同じ目的を持った複数の組織が、オープンな場で知恵を出し合うスマートシティ構想などの都市開発
双方向タイプ
(企業 × 消費者)
SNSなどを活用し、フラットな立場で議論を交わしながら商品開発や課題解決を行うBtoC企業によるファンコミュニティでの製品開発

提携タイプ

企業同士でお互いに不足している資源を補い合い、新しい価値を生み出す「アライアンス」の関係性です。

企業規模などによる上下関係や業界の枠組みを排除し、発注者と受注者ではなく「対等なパートナー」として協業する姿勢が求められます。

共有タイプ

同じ目的やテーマを持った企業、自治体、研究機関などがコンソーシアムやコミュニティを形成し、オープンな場で知恵を出し合うモデルです。都市開発やスマートシティ構想といった、大規模なプロジェクトで主に活用されています。

特定の組織に依存するのではなく、参加者全員がリーダーシップを発揮し、各専門分野で価値創出のために動くことが理想とされます。

双方向タイプ

企業と消費者がフラットな立場で議論を交わし、共に課題解決や商品開発を行うモデルです。SNSの普及により、顧客からのフィードバックを直接受け取りやすくなったことから、多くのBtoC企業がこの手法を取り入れています。

顧客を単なる消費者としてではなく「共によりよいものを創り出していくパートナー」として捉える視点が重要です。

共創を成功させるために必要なこと

共創を形だけのものではなく、実りある成果につなげるためには、いくつかの重要な要素と実践のステップが存在します。

パーパスとベネフィットの明確化

共創を推進するには、業種や立場の異なるステークホルダー全員が共有する「パーパス(共通目的)」の設定が不可欠です。どんな社会課題を解決したいのかという目的が一致していなければ、プロジェクトの成功率は低くなります。

同時に、プロジェクトに参加することで「各社にどういったベネフィット(利益や成果)が得られるのか」を明確にしておく必要があります。

共創パートナーとは、技術やノウハウだけでなくビジネスの価値や体験を深く共有し、相互理解と信頼関係を築くことが大切です。

フラットな対話の場の構築

創造的な対話や実験を継続的に行うためには、参加者が肩書きを外して向き合えるフラットな場の用意が欠かせません。

フューチャーセンターやイノベーションハブ、あるいはオンラインのコミュニティ拠点などを設けることで、組織間の壁が取り払われ、活発なコミュニケーションが促進されます。こうしたオープンな場での対話を通じて、参加者の「暗黙知」が言語化・共有され、斬新な発想が生まれやすくなります。

迅速なプロトタイピングの積み重ね

共創のプロセスは「探求」「実験」「実装」の循環で進められます。

アイデアを出し合った後は、いきなり大規模な予算を動かすのではなく、プロトタイピング(試作品の作成)を迅速に積み重ねることが推奨されます。

ワークショップを通じて実際に手を動かしながら仮説の検証や改善点の抽出を行うことで、チームの一体感や創造性も高まります。実験を重ねて成果の兆しが見えたら、自治体などと連携して社会や地域へと実装していくフェーズに移行します。

しかし、実際の現場では、進め方の迷いや安全なデータ連携、コストの壁に直面することも少なくありません。

当社では、こうした他社や他セクターとの共創を目指す企業に対し、事業構想からIT実装までをワンパッケージで支援しています。

共創を構想で終わらせないために

パーパスや対話の場を整えても、アイデアや実証が単発で終われば、共創は社会に根付く事業にはなりません。構想を社会実装へ進めるには、複数のユースケースを通じて学びを積み重ねることと、事業化に向けた意思決定や実行を継続的に支えることの両方が必要です。

銀の弾丸はない、学びを積み重ねる仕組みをつくる

複雑な社会課題に対して、最初からすべてを解決できる「銀の弾丸」のような万能策はありません。まずは対象となる生活者や現場の課題を具体化し、複数のユースケースを小さく立ち上げて仮説、実証、評価、改善のサイクルを素早く回すことが重要です。

その過程ではPMF(Product Market Fit:提供する価値が顧客や市場の課題に適合した状態)を一度のPoCで判断するのではなく、市場や利用者からの評価を得ながら検証を繰り返します。

成果が出なかった場合も対象者の設定、提供価値、収益性、運用方法などを見直し、次のユースケースへ学びを引き継ぐことで、事業化の確度を高められます。

また、検証で得た知見を担当者個人や一つのプロジェクトだけに閉じ込めないことも大切です。

成功・失敗の要因、必要なデータ、役割分担、KPI、同意取得やガバナンスの考え方などを蓄積し、ステークホルダーが共有できる仕組みを整えます。これは必ずしもITシステムに限らず、共通のルール、評価指標、運営プロセス、コミュニティなどを含む、継続的な学習の基盤です。

また、こうした学びを次のユースケースへ生かしていくためには、企業やサービスをまたいで必要なデータを安全かつ柔軟に連携できる環境も重要です。

当社では、パーソナルデータ流通基盤「Dot to Dot」を通じて、複数のサービスや企業をつなぎ、新たなユースケースを素早く実装・検証できる環境づくりを支援しています。


単なるPoCで終わらない、本気の事業化を目指す

オープンイノベーションや共創では、企業同士のマッチングやアイデア創出までは進んでも、具体的なサービスや事業の創出に至らないケースが少なくありません。PoCの実施自体がゴールになり、事業責任者、予算、収益モデル、データ連携、社内の意思決定といった実行段階の課題を越えられないためです。

構想から事業化までを一貫して支援し、関係者が本気で実行にコミットできる仕組みが必要です。

DiCE(Digital Chain Ecosystem)とは?

当社ではこうした課題を踏まえ、企業間データ連携を通じた生活者課題の解決と新規事業創出を目指す事業開発プロジェクト「DiCE(Digital Chain Ecosystem)」を実施してきました。

DiCEは、中核企業(事業の主体となるDiCE参加企業。主に大手企業・業界のリーディングカンパニー等) による戦略テーマの設定から、共創パートナーの探索・選定、事業構想の具体化、PoC・実証実験、社会実装や事業化に向けた検討までを一貫して支援する事業開発プロジェクトです。BIPROGYがテーマ設計や課題の深掘り、ビジネスモデルの構築から実装までを中核企業と1つのチームを作り伴走する点に特徴があります。

第1回には、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、朝日生命保険相互会社、日本航空株式会社が中核企業として参画し、最終的にスタートアップとの連携を前提とした4つの事業構想が創出されました。

単に事業のアイデアや構想を描くだけでなく、利用者のペルソナ設定、パートナー企業との協議、事業モデルの具体化、実証内容の検討などに踏み込みました。

DiCEの取り組みについては、BIPROGY TERASU「1年間で4つの新規事業構想を生み出したプロジェクト『DiCE』」で詳しく紹介しています。

朝日生命の「みんなのあんしん100年プロジェクト」は、DiCEで策定した介護・認知症エコシステム構想を起点に、外部企業との対話や実証で得た知見を反映しながら事業案を具体化した取り組みです。

BIPROGYグループの伴走のもと、事業構想の策定、プロジェクトの立ち上げまでを進めるとともに、パーソナルデータ流通基盤「Dot to Dot」を活用して複数企業のサービスやデータを連携。介護・認知症に関するさまざまなサービスを一つにつなぐ専用ポータルサイト「みんなのあんしん介護認知症ナビ」を構築し、2026年にサービス提供を開始しました。

ユースケースから学ぶ仕組みと、PoCで終わらせず事業化まで進める伴走支援の両方を体現した共創事例といえます。

「みんなのあんしん100年プロジェクト」が生まれた背景や、共創を通じて事業化していくまでの取り組みについては、朝日生命とBIPROGYの担当者によるインタビュー記事で詳しく紹介しています。

共創から新たな事業を生み出すことは簡単ではありません。事業化した後も、成長・拡大させて社会に根付かせていく必要があります。そのためには、共創関係の中で実践から得た学びを共有し、次の挑戦へ反映し続けることが重要です。

まとめ:共創を社会実装につなげる

共創は、多様な企業や組織を集めること自体が目的ではありません。複雑な社会課題の現場で、提供者と受益者が課題と目的を共有し、互いの知見や資源を持ち寄りながら新しい価値を生み出す取り組みです。

成果につなげるにはパーパスと各参加者のベネフィットを明確にし、フラットな対話の場を設け、プロトタイピングと検証を迅速に繰り返す必要があります。

さらに共創を構想やPoCで終わらせないためには、複数のユースケースから得た学びを蓄積・共有する仕組みと、構想から事業化まで継続して伴走する体制が欠かせません。DiCEや朝日生命の事例は、こうした学習と実行のサイクルを社会実装へつなげる重要性を示しています。

自社だけで完結しようとせず、多様なステークホルダーとともに実践と改善を積み重ねることで、共創は一過性のプロジェクトではなく、社会課題の解決と新たな事業成長を両立する持続的な仕組みになります。

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